M&Aの実務 ―DD(デューデリジェンス)を徹底解説―

2025.12.10
M&A業界情報
M&Aの実務―DD(デューデリジェンス)を徹底解説―
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0. はじめに

この記事では、M&Aの実務では欠かせないDD(デューデリジェンス)について解説します。DDの目的や流れ、実務上論点となりやすい箇所を取り扱います。

1. DD(デュー・デリジェンス)とは

DD(デュー・デリジェンス)とは、M&A等の取引の前に投資対象の事業内容や実態を詳細に調査することをいいます。具体的には、M&A・事業再編・不動産投資などといった取引の種類・形態に応じて、財務・ビジネス(事業)・法務・税務・人事・IT・不動産・知的財産・環境など、様々な観点から必要な調査を実施します。DDの種類は下記の通りです。

DDの主な種類

・財務DD
対象会社に関する様々な財務リスクに係る調査であり、各種資料の閲覧・分析、経営者へのヒアリングを通じて、正常収益力や財政状態を把握する。

・法務DD
対象会社に関する様々な法務リスクに関する調査であり、主として株式・契約・許認可関係・労務等の調査を実施する。

・ビジネスDD
対象会社の事業内容の調査を行ない、事業性や業績改善の可能性を検討し、また自社とのシナジーも考慮して事業計画に対して影響を与える要素を把握する。

・税務DD
対象会社の法人税申告書の加減算項目や、過去の組織再編・税務調査の実施状況を調査し、対象会社の税務上のリスクを把握する。

・人事DD
人事考課・昇進制度・報酬体系・退職金制度など、会社組織と人事全般を調査し、その後の運営や人事制度の統合などを行う上でのポイントを調査する。

・IT DD
ITシステムの調査・評価を実施し、IT基盤やIT統制状況の把握、保守・運用状況の把握、IT投資状況等を把握する。

・知財DD
対象会社の保有する特許権・商標権・ブランド・ノウハウ等の知的財産について、技術的・ビジネス的・財産財務的・法務的側面から、事業への貢献度や知的財産関連リスクを調査する。

・環境DD
土壌汚染問題を中心とする各種環境問題を調査する。

本記事では、M&Aにおいて最も行われることが多い、財務DDや法務DD、ビジネスDD、税務DDについて解説します。


2. 財務DDとは

M&A(企業の合併・買収)において欠かせないプロセスの1つが「財務デューデリジェンス(財務DD)」です。財務DDとは、買収対象企業の財務内容を客観的に分析・検証し、その企業の「実態」を把握するための調査を指します。表面上の決算書だけでは発見することができないリスクや潜在的な問題を明らかにすることが目的です。

財務DDの目的

財務DDの主な目的は、買収判断や価格交渉の基礎となる「正しい財務情報の把握」にあります。具体的には、以下のような観点から実施されます。

  • ①収益力の実態把握
    一時的な利益・損失を除いた「真の収益力」を分析し、将来的な収益予測の信頼性を検証します。
  • ②財政状態の健全性確認
    債務超過や過剰在庫、未収金など、企業のバランスシートに潜むリスクを洗い出します。
  • ③簿外債務・偶発債務の発見
    保証債務、訴訟リスク、未払い税金など、帳簿上に現れないリスクを特定します。
  • ④キャッシュフローの分析
    会計上の利益ではなく、実際にどれだけの現金を生み出しているかを確認します。

これらの情報は、買収価格の算定や契約条件の交渉材料となるほか、M&A後の統合作業(PMI)を円滑に進めるための重要な基礎資料にもなります。

財務DDの実施者

財務DDは、高度な会計・税務・財務の知識を必要とするため、一般的には以下のような専門家によって実施されます。

  • 公認会計士・会計事務所:主に財務諸表の信頼性検証や簿外債務の有無の確認を担当します。
  • M&Aアドバイザリー会社やFAS(Financial Advisory Services):企業価値評価や買収価格の妥当性分析など、実務的・戦略的な観点から調査を行います。
  • 税理士法人やコンサルティング会社:税務リスクや過年度の申告内容を中心にチェックすることもあります。

買い手企業の立場から見ると、財務DDは単なる「確認作業」ではなく、投資の成否を左右する重要な意思決定プロセスです。適切な専門家を選定し、限られた期間で必要な情報を精査することが、M&A成功の鍵となります。

財務DDの流れ

ここでは、一般的な財務DDの進め方を時系列で説明します。

①スコープ(調査範囲)の決定

最初のステップは、「どこまで調査するか」を明確にすることです。買い手企業と財務アドバイザーが協議し、目的(例:買収価格の妥当性確認、簿外債務の洗い出しなど)に応じて調査範囲を定めます。

  • 対象期間(通常は過去3〜5年)
  • 調査対象(連結/単体、国内/海外子会社など)
  • 重点項目(売上認識、棚卸資産、税金、負債など)

この段階で、デューデリジェンスの設計図が完成します。

②資料請求・データルームの開設

調査対象企業は、決算書、試算表、勘定科目明細書、契約書、納税資料などを開示します。近年では「バーチャルデータルーム(VDR)」と呼ばれるオンライン上で資料を共有する形式が一般的です。財務DDチームは、提示された資料をもとに一次分析を行い、疑問点を整理します。

③質問票(Q&A)・インタビューの実施

資料だけでは把握できない部分を明確にするため、質問票(Question List)を通じて企業側へ照会します。また、経理責任者やCFOなどへのインタビューを行い、会計処理の方針や内部統制の運用状況を確認します。この段階では、"表面上の数値では見えない実態(たとえば売掛金の回収状況や在庫評価の妥当性)"を把握していきます。

④分析・評価

収益性・財政状態・キャッシュフローなどを総合的に分析し、企業の実力を数値で可視化します。代表的な分析項目は以下の通りです。

  • 正常収益力の算定(ノーマライズ調整)
  • 過年度決算の信頼性確認
  • 棚卸資産の評価・滞留在庫の有無
  • 負債・偶発債務・税務リスクの把握
  • 過去の利益操作や不正リスクの検証

これらの結果は、買収価格の修正や契約条件(表明保証条項など)に反映されます。

⑤レポーティング(報告書作成)

最後に、調査結果をまとめた「財務DD報告書」を作成します。報告書では、主要な財務リスクや会計上の問題点、税務リスクなどが整理され、経営陣や投資委員会に提出されます。報告書は、単なる数字の集計ではなく、「どの項目にどのような潜在的リスクがあるか」「それがM&A後の経営にどう影響するか」を示す実務的な内容になります。

⑥買収契約・PMIへの反映

財務DDで得られた知見は、買収価格の見直しや契約条件の設定(補償条項・アーンアウト条項など)に活用されます。また、M&A後の統合作業(PMI)においても、内部統制や会計方針の統一に役立てられます。

資産項目の調査のポイント

資産項目の調査は、実在性と評価の妥当性を中心に確認します。
実在性の確認とは、その資産が本当に実在するかを確認する作業です。預金であれば通帳を、有価証券であれば実際に確認する作業になります。
評価の妥当性の確認とは、資産の簿価に見合う価値があるかを確認する作業です。棚卸資産として計上されていても、実際に販売できる見込みがなければ損失処理をしなければなりません。

①現金預金

現金預金については、まず帳簿上の残高と金融機関から取得する残高証明書との一致を確認し、残高の実在性を検証します。また、小口現金や手許現金については実査を行い、帳簿残高との整合性を確認する必要があります。さらに、通帳やオンラインバンキングの取引履歴を分析し、記帳漏れや不明入出金がないかについても確認します。特に中小企業では、経営者個人名義の口座を業務で利用しているケースも見られるため、名義預金の有無や私的流用の可能性についても注意が必要です。

②売掛金

売掛金については、期末残高の実在性および回収可能性を確認することが重要です。売掛金残高の正確性について、売掛金台帳や勘定科目明細から確認します。監査では、取引先ごとの残高を一覧化し主要先については残高確認状を送付して実在性を検証しますが、M&Aは秘密性も高くスケジュールもタイトなため、通常は残高確認状で実在性を確認することは想定し難いです。併せて、入金実績と回収サイトを照合し、滞留債権や貸倒懸念債権の有無を把握します。特に、決算期直前の売上計上については、出荷日や検収日との関係を確認し、売上の前倒し計上が行われていないかを検証します。関連会社や役員関係先への売掛金については、商取引の実態と資金移動の性格を確認する必要があります。

③棚卸資産

棚卸資産については、実地棚卸立会や棚卸リストとの突合を通じて、在庫の実在性を確認します。また、滞留品や陳腐化在庫の有無を調査し、評価損の計上が適切に行われているかについても検証します。評価方法については、最終仕入原価法や移動平均法など、採用している会計方針の妥当性を確認し、会計基準に沿っているかを検討します。製造業の場合は、仕掛品・製品の原価計算方法についても精査し、原価配賦の適正性を検証します。さらに、期末の入出庫データを確認し、期ズレによる売上・仕入の誤計上がないかを確認します。

④什器備品・機械設備等

什器備品や機械設備等については、固定資産台帳と実物の照合を行い、資産の実在性を確認します。加えて、遊休・老朽化資産の有無を確認し、減損や除却処理の要否を検討します。減価償却については、耐用年数や償却方法が会計基準に準拠しているかを確認するとともに、償却漏れや過大計上の有無を検証も行います。また、リース契約資産については、オンバランス処理・オフバランス処理の区分を確認し、資産計上の適正性を判断します。

⑤不動産

不動産については、登記簿謄本や固定資産台帳を基に、所有権の所在および担保設定の有無を確認します。固定資産税評価額や時価と比較し、帳簿価額との乖離が大きい場合は、減損の判定も行います。また、建物については、耐用年数・減価償却方法の妥当性を確認し、老朽化資産や使用していない物件については減損リスクを検証します。さらに、賃貸物件がある場合には、賃貸借契約の条件(賃料・更新料・契約期間など)を確認し、賃料収入の妥当性を評価します。環境リスク(例えば土壌汚染やアスベストなど)が存在する場合には、将来的な修繕費用負担の可能性についても考慮する必要があります。

⑥無形固定資産

無形固定資産については、計上されている資産の識別性および実際の利用実態を確認します。特に自社開発ソフトウェアの場合は、研究開発費との区分基準が適切かを確認し、資産計上の根拠を精査します。商標権や特許権などの権利関係については、登録状況や有効期限、使用状況を確認し、減損の兆候がないかを検証します。のれんが計上されている場合には、その算定根拠を確認し、事業計画との整合性を踏まえて減損テストの実施状況を確認します。また、IFRSを適用している場合には、日本基準との償却方針の違いにも留意します。

⑦投融資

投融資については、取得価額および時価を比較し、評価損リスクの有無を検証します。特に関連会社株式については、被投資先の財務内容や業績を確認し、出資金の回収可能性を判断します。未上場株式については、純資産価額法など適切な評価方法が用いられているかを確認します。また、投資目的が明確であり、企業の事業戦略と整合しているかも重要な検討要素となります。配当実績や売却可能性の有無も確認し、長期滞留投資や減損リスクの存在を把握する必要があります。

⑧貸付金

貸付金については、まず契約書を確認し、貸付条件(利率・返済期限・担保等)の妥当性を把握します。実際の返済実績をもとに、回収可能性を検証し、貸倒引当金の設定が適切かを確認します。関連当事者(役員・子会社など)への貸付がある場合には、取引の実質的な目的を確認し、資金流用や経営者個人取引が含まれていないかを注意深く検討します。長期間返済がない場合には、実質的な贈与や出資とみなされるリスクがあるため、税務面での影響も含めて検証が必要です。

負債項目の調査のポイント

負債項目の調査では、網羅性の観点からの確認が重要になります。
これは、全ての負債が漏れなく網羅的に貸借対照表に計上されているかを確認する作業です。負債の計上漏れがあると、その分純資産が過大に計上されるという問題につながります。また、簿外債務を認識できていないという状況になるので、買収後に予期していない問題が発覚するケースもあります。

①買掛金・未払金などの負債項目

買掛金および未払金については、まず帳簿残高の実在性と網羅性を確認します。仕入先や外注先との取引明細を照合し、期末時点で計上漏れがないかを検証します。特に、期末前後の仕入・支払データを分析し、費用の帰属期間が適切であるかを確認します。

また、関連会社や役員関係先への未払金が存在する場合は、商取引に基づくものか、それとも資金移動・仮払精算などの性質を持つものかを明確に区分する必要があります。未払費用や未払法人税などの経過勘定についても、支払予定額との整合性や発生根拠の妥当性を確認し、費用認識の適正性を検証します。特に未払賞与や未払役員報酬は、承認手続きの有無や支払実績を確認し、発生主義の原則に沿っているかをチェックする必要がある点にも留意が必要です。

②借入金・リース債務

借入金については、金融機関ごとの残高証明書と帳簿残高を照合し、負債の実在性を確認します。契約書を精査し、金利条件・返済スケジュール・担保設定・財務制限条項(コベナンツ)の有無の確認も必要です。また、借入金の一部が経営者個人保証に依存している場合には、M&A後の引き継ぎ可能性を検討する必要があります。

リース債務については、契約内容を確認し、リース取引がファイナンスリースとしてオンバランスされているか、またはオペレーティングリースとして費用処理されているかを検証します。新リース会計基準適用後は、使用権資産・リース債務の認識が求められるため、導入状況や影響額の把握も重要です。

③引当金(賞与引当金・退職給付引当金・修繕引当金など)

引当金については、発生見込額の合理的な見積りと、過年度実績との整合性を中心に検証します。賞与引当金は、期末時点で従業員に対する支給義務が発生しているかを確認し、社内規程や支給決議との対応を確認します。退職給付引当金については、退職金制度の内容・過去勤務債務の認識・割引率の設定方法など、会計基準に基づく算定根拠の妥当性を確認します。

また、修繕引当金や保証引当金など将来の支出に備えた引当金については、支出発生の蓋然性と金額見積りの合理性を検討し、恣意的な利益操作や過大・過少計上が行われていないかを注意深く確認します。特に中小企業では、実際の支出がないにもかかわらず引当金を計上するケースや、逆に必要な引当がされていないケースもあるため、慎重な判断が求められます。

④税効果会計

税効果会計の検証においては、まず繰延税金資産・繰延税金負債の算定根拠を確認します。特に、欠損金の繰越控除による繰延税金資産が計上されている場合には、将来の課税所得の見込みが合理的かどうかを慎重に判断する必要があります。過年度の実績や今後の事業計画、業績見通しをもとに、回収可能性の高低を評価します。

また、一時差異の発生原因(減価償却差異・引当金差異など)を把握し、税率変更や会計方針変更の影響が正しく反映されているかを確認します。税効果の会計処理が適切に行われていない場合、将来的に大きな損益インパクトを生じる可能性があるため、M&A後のP/L・B/Sへの影響を定量的に把握することが重要です。

⑤偶発債務

偶発債務については、貸借対照表上には計上されていない潜在的な負債リスクを把握することが目的です。具体的には、訴訟・係争案件、保証債務、環境関連費用、未払税金リスクなどを中心に調査します。顧問弁護士へのヒアリングや訴訟一覧表の確認を通じて、発生可能性および金額の見積りを行います。

特に関連会社や役員個人への保証、リース契約や長期取引契約に付随する債務保証など、将来的な支払い義務が潜在しているケースは注意が必要です。また、過年度の税務調査で指摘を受けている事項がある場合には、追徴課税リスクとして開示が求められます。偶発債務の把握は、M&A契約書における表明保証条項や補償条項の設定に直結するため、財務DDの中でも極めて重要な調査項目です。


3. 法務DDとは

法務DDは、単に「契約書のチェック」を行う調査ではありません。企業の持つ「権利・義務・責任の全体像」を把握し、買収後の法的安定性を確保するための戦略的プロセスです。特に、近年はガバナンス・コンプライアンス・知的財産管理・個人情報保護など、企業を取り巻く法的リスクが多様化しており、法務DDの重要性はますます高まっています。

(1)法務DDの目的

法務デューデリジェンス(Legal Due Diligence)は、買収対象企業の「法的リスク」や「契約関係の実態」を明らかにすることを目的としています。

M&Aにおいては、対象会社の財務状況だけでなく、法令遵守の状況(コンプライアンス)や契約上の潜在的リスクを事前に把握することが不可欠です。例えば、取引先との契約に不利な条項が含まれていたり、知的財産の権利関係が不明確であったり、あるいは労働契約や許認可面で問題がある場合、それらは将来的に企業価値を大きく損なうリスクとなり得ます。

そのため法務DDは、買収価格の妥当性の判断、表明保証条項の設定、取引スキームの設計に直接影響する、きわめて重要な調査プロセスといえます。

(2)法務DDの実施者

法務DDは、主に以下の専門家や関係者によって実施されます。

  • 弁護士事務所
    中心的な実施主体であり、企業法務に精通した弁護士が契約書・登記・訴訟・許認可・知財などを包括的に調査します。
  • 社内法務部門
    買い手企業側の法務担当者が、弁護士と連携しながら調査範囲の設定や重点領域の指示を行います。
  • M&Aアドバイザリー会社・FAS部門
    取引スキームの観点から、法的リスクの影響を財務評価や契約交渉に反映させる役割を担います。

中堅〜大規模のM&Aでは、財務DD・税務DD・ビジネスDDと同時並行で実施され、法務DDチームは他分野の専門家とも密接に連携して進めます。

(3)法務DDの流れ

①スコーピング(調査範囲の設定)

最初に、取引の目的やスキームを踏まえて、調査の重点領域を設定します。例えば、製造業であれば「許認可・製造委託契約」、IT企業であれば「知的財産・著作権・利用契約」、サービス業であれば「人事・労務・派遣関連法令」など、業種によって重点は異なります。この段階で、買い手と弁護士の間で「調査リスト(Due Diligence Request List)」が作成され、対象会社から関連資料が提出されます。

②資料収集・レビュー

対象会社が開示する契約書・登記簿謄本・株主名簿・就業規則・訴訟一覧・知財登録情報などをレビューし、重要契約の有無や内容を精査します。この際、契約書の中に「チェンジ・オブ・コントロール条項(買収により契約が解除される条項)」や「競業避止義務」など、M&A後の事業継続に支障をきたす内容が含まれていないかを重点的に確認します。また、許認可関係では、事業運営に必要な許可がすべて有効であるか、更新手続きが適切に行われているかを確認します。

③ヒアリング調査

提出資料だけでは把握できない事項について、対象会社の経営陣や法務・人事担当者に対してヒアリングを実施します。特に、未開示契約、係争中の案件、社内のコンプライアンス体制、内部通報制度の運用状況などについては、口頭確認が有効です。また、取締役会の運営状況や議事録の整備状況など、ガバナンスの実態を確認することで、経営管理上のリスクも明らかにします。

④リスク分析・評価

収集した情報をもとに、法的リスクを識別し、その発生可能性と影響度を評価します。例えば、契約違反が発覚する可能性が高く、金銭的損失が大きい場合には「重大リスク」として分類されます。一方で、法的にはグレーゾーンであっても、企業イメージやコンプライアンス上の懸念がある事項についても、M&A後のPMI(統合作業)で考慮すべき課題として整理されます。

⑤報告書作成(Legal DD Report)

最終段階では、調査結果をまとめた法務DD報告書が作成されます。報告書には、主要な法的リスクとその重要度、改善・対応方針、契約上の留意点などが記載されます。また、M&A契約書の作成時には、この報告内容をもとに”表明保証条項(Representation & Warranty)や補償条項(Indemnity)”を設定し、将来の紛争リスクを抑制します。

(4)法務DDの論点・ポイント

①会社・組織関連

まず、法務DDの初期段階で確認されるのが、会社の基本的な登記・組織構成の正確性です。会社の登記簿や定款、株主名簿、取締役会議事録などを精査し、現経営陣や主要株主が正式に登記されているか、増資・株式譲渡などの手続が適正に行われているかを確認します。特に非上場企業の場合、過去の株式移転やストックオプションの付与が法的に有効か否かについて論点となることが多く、手続の瑕疵が後の紛争リスクにつながる可能性があります。

②契約関係

法務DDにおいて最も重要な分野の一つが契約関係の調査です。取引基本契約、販売・仕入契約、リース契約、業務委託契約などの主要契約を確認し、解除条件、独占条項、競業避止義務、損害賠償責任の範囲などをチェックします。M&A後に契約が自動的に終了してしまう「チェンジ・オブ・コントロール条項(CoC条項)」の有無も重要です。また、契約書未締結で口頭取引に頼っているケースや、親族・関連会社間での取引条件が不透明な場合は、実質的な取引リスクとして指摘されやすい部分です。

③労務・人事関係

労務分野では、労働契約書・就業規則・賃金規程の整備状況、および社会保険・労働保険の加入状況を確認します。未払い残業代や名ばかり管理職の存在、退職金制度の扱いなど、潜在的な労務リスクがあるかどうかが焦点となります。また、近年はハラスメント防止体制の不備や外国人労働者の在留資格問題など、コンプライアンス面での指摘も増えています。労働審判や訴訟履歴がある場合は、再発リスクを慎重に検討します。

④許認可・行政対応

特定業種では、事業運営に必要な許認可が適正に取得・維持されているかが大きな論点です。例えば、建設業許可、宅建業免許、医療・介護事業の指定など、名義貸しや更新漏れがないかを確認します。更に、行政処分歴や改善命令の有無、監督官庁との関係も重要で、行政対応リスクがある企業は買収後の事業継続に支障をきたすおそれがあります。

⑤知的財産権

法務DDでは、知的財産権の所有関係と利用状況の確認も欠かせません。特許・商標・著作権・ドメインなどの権利が会社に帰属しているか、他社権利の侵害リスクがないかを検証します。特にソフトウェア関連企業では、従業員や外注先が開発したコードの著作権帰属が不明確なケースが多く、M&A後に権利侵害を主張される可能性があるため注意が必要です

⑥訴訟・紛争関係

現在進行中または潜在的な訴訟・紛争の有無も、法務DDで必ず確認されます。訴訟の相手方・金額・争点を分析し、引当金の妥当性や再発防止体制も合わせて検討します。また、訴訟に至っていない「クレーム・トラブル・行政指導」の履歴も潜在リスクとして評価されるため、内部報告体制やコンプライアンス委員会の記録を確認することも実務上重要です。

⑦不動産・リース関係

所有不動産については、登記名義と利用実態の一致を確認し、抵当権・賃借権・地上権などの付帯権利が問題とならないかを調査します。賃貸物件についても、中途解約条項や原状回復義務の内容が将来的なコストに影響するため、法務DDでは細かく検討されます。また、リース資産に関しては会計基準上の「オンバランス化」の影響も踏まえ、契約構造の妥当性を確認します。法務DDは、単なる書面確認ではなく、リスクの発見と定量的評価が目的です。特に契約・労務・知財・訴訟の4分野は、実務上の論点が集中する領域です。

近年はサステナビリティや個人情報保護(プライバシーポリシー、Pマークなど)も対象範囲に含まれ、法務DDの重要性は年々高まっています。


4. ビジネスDDとは

(1)目的

ビジネスDDの目的は、対象会社の事業の実態と将来性を客観的に把握することにあります。財務DDや法務DDが「過去の事実の検証」を重視するのに対し、ビジネスDDは将来の収益力・競争力・成長性を見極める調査です。

具体的には、以下のような観点が中心となります。

  • その会社のビジネスモデルが市場で持続可能か
  • 主要な収益源やコスト構造がどれほど安定しているか
  • 顧客・販売チャネル・競合環境の中でどのようなポジションにあるか
  • シナジー効果(買収企業との相乗効果)が現実的に見込めるか

つまり、ビジネスDDは「この会社を買って、本当に儲かるのか?」という問いに答える調査であり、M&Aの戦略的意思決定に直結する、最も実務的かつ将来志向のデューデリジェンスといえます。

(2)ビジネスDDの実施者

ビジネスDDを担当するのは、M&Aアドバイザリー会社やコンサルティングファーム、あるいは事業会社の経営企画部門や投資部門です。大手では、戦略コンサルティング部門(例:デロイトトーマツFAS、PwCアドバイザリー、アクセンチュア、ベインなど)が中心的に実施し、必要に応じて業界専門家や外部リサーチ会社が協力します。財務DDや法務DDのように公認会計士や弁護士が主導するものではなく、経営戦略・マーケティング・業界分析の専門家が主体となる点が特徴です。買い手側だけでなく、売り手側が「セルサイドDD」として自社の事業価値を整理するために実施するケースも増えています。

(3)ビジネスDDの流れ

ビジネスDDは一般に、以下のような流れで実施されます。

①事前理解・スコーピング

まず、対象会社の事業内容・市場環境・M&Aの目的を整理します。買収目的が「成長市場への進出」なのか、「収益基盤の安定化」なのかによって、調査の焦点は異なります。この段階で、調査対象範囲(スコープ)や優先順位を明確に設定します。

②情報収集・インタビュー

対象会社から提供される事業計画書・KPI資料・販売データなどを基に分析を行い、必要に応じて経営陣や主要社員へのインタビューを実施します。また、顧客や競合、仕入先などの”外部ヒアリング(Voice of Customer / Supplier)2も行い、会社が説明する「強み」や「市場シェア」が実態と一致しているかを確認します。

③分析・検証

前のステップで集めた情報をもとに、以下の観点で事業性を検証します。

  • 市場分析:業界規模・成長率・参入障壁・主要プレイヤーの動向
  • 競争優位性:製品・技術・ブランド力・コスト構造の優位性
  • 顧客構造:主要顧客の集中度、リピート率、チャーン率など
  • ビジネスモデル:収益の源泉、単価・数量・コストの関係、依存リスク
  • 事業計画の妥当性:過去実績との整合性、前提の合理性、成長要因の持続性

この分析を通じて、事業の「強み」と「リスク」を可視化します。

④シナジー・リスク評価

次に、買収企業との”シナジー(相乗効果)”の可能性を評価します。 販路拡大、調達コスト削減、技術共有、人材補完など、統合後の価値向上要素を定量的に試算します。同時に、”事業リスク(競合の台頭・法規制・キー人材流出など)”も抽出し、統合後の課題として整理します。

⑤報告書作成・助言

最後に、調査結果を「ビジネスDDレポート」としてまとめます。レポートには、主要なリスク・改善提言・将来シナリオなどが記載され、買収価格やPMI(統合プロセス)の設計にも反映されます。

(4)ビジネスDDの論点・ポイント

①市場・業界分析

ビジネスDDの出発点は、対象企業が属する市場環境の理解です。市場の規模や成長性、技術革新のスピード、参入障壁などを多角的に分析し、今後の事業拡大余地がどの程度あるのかを見極めます。 特に重視されるのは、市場の構造変化と競争要因です。例えば、人口減少やデジタル化といったマクロトレンドが事業にどのような影響を与えるのか、新興プレイヤーや海外勢の参入によって既存ビジネスモデルが崩れないかを確認します。単に成長している市場かを判断するわKEではなく、持続的に利益を上げられる市場構造かを見極めることが重要です。

②競合分析

次に、同業他社との比較を通じて、対象企業の”競争優位性(または脆弱性)”を評価します。このとき単に売上やシェアだけを見るのではなく、ビジネスモデル・コスト構造・ブランド力・技術力など、差別化要素を定性的・定量的に把握します。また、価格競争が激しい市場では「薄利多売構造」になっていないか、特定の得意先や仕入先への依存度の高さが経営リスクになっていないかも確認します。競合が同様のサービスを提供し始めた場合に、対象企業がどれほど耐性を持つのか、将来の収益予測に反映できるように分析します。

③顧客・チャネル構造

ビジネスDDでは、顧客の属性や取引集中度の分析も欠かせません。特定の大口顧客に売上の大半を依存している場合、契約解除リスクや値下げ圧力が潜在的に存在します。また、販売チャネル(直販・代理店・ECなど)の多様性や、顧客獲得コスト(CAC)、リピート率(Retention)などのKPI指標も重要です。近年では、サブスクリプション型ビジネスやSaaS事業などにおいて、 “チャーン率(解約率)やLTV(顧客生涯価値)”がDD上の主要な論点となっています。これらのKPIの信頼性を確かめるために、実際の顧客データの抽出検証が行われることもあります。

④商品・サービス・技術構造

対象企業が提供する商品・サービスの競争力を、品質・価格・差別化要素の観点から検証します。特に製造業の場合は、主要製品の売上比率(プロダクトミックス)や開発パイプライン、技術的な参入障壁の高さなどを評価します。 サービス業では、”人的リソースの質や再現性(属人化の程度)”がポイントになります。また、技術系企業の場合、保有技術の陳腐化リスクや特許保護の有無など、知的財産面との連動分析も必要です。「強み」とされている技術が、実際には市場で代替可能な場合もあるため、第三者の視点で妥当性を検証します。

⑤ビジネスモデルと収益構造

ビジネスモデルの分析では、会社がどのように利益を生み出しているかを定量的に明らかにします。具体的には、収益のドライバー(数量×単価)、コスト構造、営業利益率、キャッシュ創出力などを整理します。このとき、「一時的な収益」や「補助金・助成金への依存」など、持続性のない収益源が含まれていないかを確認することが重要です。また、事業成長のボトルネック(人材・設備・在庫・資金など)がどこにあるかを把握し、買収後にどのような投資が必要になるのかを明確にします。例えば、営業力は強いがバックオフィスが脆弱である場合、統合後に管理体制整備コストが発生する可能性があります。

⑥事業計画・将来見通し

対象企業が提出する中期経営計画の前提条件を検証し、成長シナリオの妥当性を判断します。過去の実績との整合性、外部環境の変化、競合の動向などを踏まえて、売上成長率や利益率の前提が過大でないかを慎重に検討します。また、経営陣がどの程度データドリブンで計画を立てているかも評価対象です。 感覚的な「希望的観測」に基づく計画は、M&A後のPMI(統合プロセス)で乖離が生じやすくなります。将来計画を再構築し、”買収価格の妥当性評価(バリュエーション)”に直結させるのが、ビジネスDDの最終目的といえます。

⑦シナジー・リスク評価

最後に、買い手企業との間で見込めるシナジー効果と、逆に統合によって生じ得るリスク要因を整理します。販売チャネルの共有やコスト削減などのポジティブ要素だけでなく、文化的な不一致、キーマン退職、顧客流出などのポストM&Aリスクも定量的に評価します。近年では、ESGやサステナビリティの観点から、社会的信用やレピュテーションリスクも評価対象に含まれる傾向があります。


5. 税務DDとは

(1)税務DDの目的

税務DDの主な目的は、買収後に発生する可能性のある税務リスクを把握し、適正な買収価格や契約条件を判断することにあります。企業の税務は、表面的な決算書からは見えにくい部分が多く、税務調査や過年度の申告内容に潜むリスクが後から顕在化することも少なくありません。そのため、買収前にしっかりと実態を把握しておくことが、将来の損失を防ぐ上で極めて重要となります。具体的には、次の3つの目的に整理されます。

  • 潜在的な税務リスクの特定
    過去の税務申告や取引処理に誤りがないかを確認し、追徴課税などのリスクを洗い出します。
  • 税務ポジションの把握・評価
    繰越欠損金や税効果会計の内容を分析し、税務上の有利・不利を明確にします。
  • 最適な買収スキームの検討
    株式譲渡、事業譲渡、合併などの形態ごとに税務上の影響を分析し、買収後の税負担を最小化できる構造を検討します。税務DDは単に過去の誤りを見つける作業ではなく、「買収後の経営にどのような税務リスクが残るか」を見極める戦略的な調査であるといえます。

(2)税務DDの実施者

税務DDは、専門的な税務知識と企業会計の理解が必要となるため、一般的には専門家チームによって実施されます。主な実施者は以下の通りです。

  • 税理士法人・会計事務所(BIG4)
    税務申告、法人税、消費税、国際税務などの専門家が中心となり、過去の申告内容を精査します。
  • 公認会計士・財務DDチーム
    財務面での実態と税務処理の整合性を確認し、税務上の論点を定量的に評価します。
  • 法務アドバイザー(弁護士)
    契約書や取引構造に税務リスクが内在していないかを確認し、表明保証条項への反映を検討します。
  • 買い手企業の財務・経理担当者
    現場実務の補足説明や、顧問税理士との調整を担うことが多いです。特に中規模以上のM&Aでは、財務DDと税務DDを同一の会計事務所が連携して実施し、調査結果を統合的に評価するケースが一般的です。

(3)税務DDの流れ

税務DDは通常、1〜2か月程度の期間で実施され、以下のような流れで進行します。

①事前準備・スコーピング

まず、買い手とアドバイザーの間で調査範囲を明確にします。 対象企業の業種や取引形態に応じて、法人税・消費税・源泉税・国際税務など、重点的に調べる分野を設定します。 その上で、過去数期分の税務申告書や試算表、会計データ、税務調査記録などを提出してもらいます。

②資料分析

提出資料をもとに、各税目の税務処理の妥当性を確認します。 たとえば、損金算入の可否、交際費や寄附金の処理、消費税の課税区分、源泉徴収義務の履行状況などを検証します。 また、税効果資産や繰越欠損金の利用可能性といった将来的な税務ポジションの分析も行われます。

③ヒアリング

対象会社の経理・財務責任者、あるいは顧問税理士に対してヒアリングを実施します。資料から読み取れない実務運用や、過去の税務調査での指摘事項を確認することで、より実態に近い判断を行います。

④リスク評価

調査で判明した論点を整理し、それぞれの税務リスクを「高・中・低」などのレベルで評価します。追徴課税となる可能性が高い項目については、金額インパクトを概算し、買収価格調整や契約書での表明保証条項に反映します。

⑤報告書作成・提言

最終的に、「税務DD報告書(Tax DD Report)」として調査結果をまとめます。そこでは、リスクの内容や金額的影響だけでなく、今後の対応方針や改善提案も記載されます。また、財務DD・法務DDチームとも内容を共有し、最終的な投資判断や契約条件の策定に活用されます。

(4)税務DDの論点ポイント

①法人税関係

法人税の分野では、収益・費用の認識の妥当性が最も重要な確認項目です。 売上計上時期が適切か(例:検収基準・出荷基準の混在など)、経費が発生主義で正しく処理されているかを確認します。特に実務で問題となるのは以下のような点です。

  • 役員給与・役員賞与の損金算入可否(定期同額給与・事前確定届出給与の扱い)
  • 交際費・寄附金の損金不算入の取り扱いの誤り
  • 減価償却方法・耐用年数の誤用
  • 引当金・準備金の計上(貸倒引当金・賞与引当金など)の適正性

また、グループ内取引や関係会社貸付などがある場合は、移転価格税制や寄附金認定リスクも考慮する必要があります。

②消費税関係

消費税では、課税・非課税取引の区分が適正かどうかが最初の焦点です。 特にサービス提供型の事業では、国外取引や軽減税率の判定を誤っているケースが少なくありません。また、以下のような実務論点もよく問題になります。

  • 仕入税額控除の適用漏れまたは過大控除(請求書の保存・インボイス登録番号の確認)
  • 共通仕入の按分方法の誤り(非課税売上との対応関係)
  • 居住用賃貸等の非課税売上に関する仕入控除制限

消費税の誤りは金額影響が大きく、税務調査での指摘が頻発するため、 税務DDでは数年分の申告書と仕訳データを突合して精査することが一般的です。

③源泉所得税・給与関連

給与・報酬・配当などの支払いに関する源泉徴収の適正性も、税務DDの重要な調査対象です。特に、外注契約や業務委託の扱いが曖昧な場合、本来源泉すべき報酬を源泉していないケースがあります。また、役員・従業員に対する”経済的利益(社宅貸与、持株会制度、貸付金等)”の課税漏れがないか、 給与課税や年末調整の処理が適正に行われているかも確認します。外国人社員がいる場合には、非居住者課税や租税条約の適用など、国際税務の論点も発生します。

④地方税(事業税・住民税など)

地方税では、外形標準課税の計算の誤りや、非課税・減免の誤用が指摘されることがあります。また、事業所税や償却資産税など、地方自治体ごとにルールが異なるため、複数拠点を持つ企業では地方間での税務対応の一貫性が論点になります。さらに、所在地変更や組織再編時の異動届出漏れも意外と多く、 税務署・都道府県・市区町村それぞれに適正な申告・届出がなされているかを確認します。

⑤繰越欠損金・税効果会計

M&Aの買収判断において重要なのが、繰越欠損金や税効果資産の実現可能性の評価です。繰越欠損金があっても、”株主の異動による制限(所得税法第57条・法人税法第57条)”などで使えない場合があります。また、税効果資産の回収可能性が低い場合は、実質的に帳簿価値が過大評価されていることになります。税務DDでは、これらの項目について回収見込みの根拠を確認し、バリュエーション上の調整項目として買収価格に反映させることが一般的です。

⑥組織再編・グループ内取引

グループ会社間での再編(合併・分割・事業譲渡など)がある場合、 適格要件の充足状況や繰越欠損金の引継制限が実務上の大きな論点となります。また、親子会社間での寄附金認定リスクや受取配当金の益金不算入の適用誤り、移転価格税制・タックスヘイブン対策税制の適用状況も慎重に確認すべき項目です。近年は、グループ通算制度(旧連結納税制度)への対応が不十分なケースや、通算グループ外との取引処理に誤りがあるケースも散見されます。

⑦税務調査・訴訟履歴

税務DDでは、過去の税務調査結果・指摘事項・修正申告履歴を確認することが重要です。同じ論点が継続的に発生している場合、内部統制上の問題や、今後の再指摘リスクが想定されます。また、未処理の税務争訟や不服申立てがある場合には、その影響額を見積り、偶発債務として開示する必要があります。


6. まとめ

DD(デューデリジェンス)の各種論点についてお話ししました。この記事が皆様にとってお役に立てれば幸いです。